猫を拾った
それはそれは変わった猫を
猫の飼い方
銀時は目の前の光景に固まってしまった。
どんなに鈍いやつが見ても、どう考えても、厄介な状況だったのだ。その光景は。
いつものように、パチンコで大敗して帰宅。
いつものように万屋の階段の下に原チャをおいた。
そして回り込んでウチへの階段を上ろうとしたところ、そこに異物を発見する。
どうしたものかと思う。
首に手をあて悩んだ結果、見なかったことにするという選択肢を彼は選んだ。
少し狭くなっているそこをすり抜けようとした瞬間、銀時の足は掴まれ、呆気なく地面にたたき落とされる。
階段の2段目からの落下。
そこそこに痛い。
「ってぇぇっ!なにしやがる!?」
尻餅をついた彼を階段の2段目に腰を下ろしたまま見下ろすのは黒眼が印象的な娘。
ぱっとみ、年齢は分からない。
幼くもみえるが、でている雰囲気は老獪。
ちなみに知らない人間だ。
「君が万屋の旦那?」
「…おう。つーかあれ?謝罪は?」
銀時が肯定すると、彼女は立ち上がり後ろを向いた。
「依頼があるんだ。けど立ち話はなんだから中に入ろう。」
「あれ、謝罪は?ってか、俺の家だよね?あれ、なんか間違ってない?」
理不尽以外の何物でもない物言いだが、扉の前で鍵をだせと言わんばかりに手を出され、渋々従ってしまう。
恐らく客なのだろう。…恐らく。
がらんとした室内。
新八と神楽は出払っているらしい。
「ココにおいて欲しいんだ。」
どかっと我が物顔でソファーに腰を下ろすと、彼女はとんでもないことを言い出した。
「…お断り申す。」
しばらく睨みあい。
(顔は可愛いんだがなぁ)
しかし両者譲らない。
ここは(恐らく)大人な自分がどうにかしようと、銀時は口を開いた。
「なんで?」
「家がないから。」
「帰れば?」
「遠い。」
「名前は?」
「まだない。」
「吾輩は?」
「猫である」
「名前は?」
「まだない。」
押し問答とはこのことか。
銀時は溜め息をつくと立ち上がった。
「悪いが、他行け。ウチは無理だ。」
「お金はあるよ?」
「宿貸しは業務外なんですぅ。」
再び彼女の横をすり抜けようとしたが、今度は袖を掴まれた。
振り向くと、黒目がちな彼女と目が合う。
一瞬ドキリとした。
戯れで構っていた野良ネコと別れるときのような感覚
「うっっお!?」
体の力が抜けた瞬間、思い切り袖をひかれ、銀時はそのまま横倒れ。
電光石火の早業で、彼女はソファに倒れる銀時の上に馬乗りになった。
まるで猫のような身の軽さ。
「何この状況。」
しかし彼女は答えない。
ただ、半ば睨むように銀時を見つめるだけ。
(あぁ、やめてくれ、その目。)
心臓を鷲掴みにされる。
「だーっっ!分かった!分かったからどいてくれ!!!」
とうとう銀時が折れた。
「本当!?やったぁぁぁ!!」
途端に満面の笑顔。
「君の名前は!?」
「…銀時。」
「じゃぁ銀時!僕、構ってもらえないと機嫌悪くなるから!あ、あと好物は甘いもの!!」
「はぁっ!?」
「よろしくねっ!!」
いろいろと理不尽で、訳のわからないことが多すぎるが、どうやらこの瞳に弱いらしい。
銀時はこれからを思い、うなだれた。
今日、猫を拾いました。
初めてだし、分からないことだらけだけど、頑張って飼おうと思います。(あれ、作文?)
「名前は?」
「だから無いんだって。」
「銀ちゃんー。ただいまアルーっ……………新八ーーーーーっ!銀ちゃんが女連れ込んでチョメチョメしてるアルーーーーっ!!!!!!」
「チョメチョメって言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」