「勝負!」
ドドンと目の前に出されたのは作りたての厚焼き卵。
衝撃で味噌汁が左右に揺れた。
「また?」
問えば力強く頷く目の前の女。
只今午前7時30分
坂田家の正しい朝食の時間
神楽の白飯はすでに2杯目
厚焼き卵はこれで2週間連続。
良くも飽きずに毎朝くるものだ。
期待の籠もった目で見つめられ、箸をつける。
「ちゃん、そんなに見つめられると食べにくいんだけど…」
「銀さんではなく玉子焼きを見ているの。」
ここのところ毎日朝飯をつくりにくるのは絶賛(不純)異性交流中のちゃん。
彼女は最近厚焼き玉子にご執心。
2週間前、いろいろ致しちゃって無理させて中々起きない彼女のために朝飯でも、と思いたって作った料理。
白飯にワカメの味噌汁、そして厚焼き玉子の大根おろし添え。
これぞ完璧な朝食。
丁度起きた彼女とテーブルを囲む。
(もうコレ夫婦じゃね?毎日銀さんが朝飯つくっちゃうから、YOU嫁に来ちゃいなよー……なんて軽く言えるか馬鹿やろぉぉぉぉっ)
銀時の心の声なんて知る由もないは、厚焼き玉子に目が釘付けになっていた。
「…どした?」
「これ…銀さんが作ったの?」
「そ。こーみえて銀さん料理得意だしー」
「…」
…その次の日からだ。毎日朝食、というか厚焼き玉子をつくりに来ているのは。
「60点てとこ。」
「ぜ…前日比+3点」
一口で放り込みそう言うと、彼女はうなだれた。
「巻くのは上手くなったみてぇだけど、固い。」
「うぅ…」
厚焼き玉子は難しい。
別にの料理の腕前が悪いわけではないのだ。
「大体、俺のが料理得意なの知ってるだろ。」
「知ってるけどー…」
負けず嫌い、というか。
「あのなー…厚焼き玉子なら銀さんが毎日でも作ってやるから。」
「それじゃ意味な…」
「銀ちゃん」
の言葉を遮って、神楽がモゴモゴと喋った。あれだけ口にものを入れて喋るなって…
「それ、ぷろぽーずアルカ?」
「「へ?」」
「毎日味噌汁作ってって言うのと同じアル。」
た…確かに。
「じゃ、お邪魔虫は消えるネ。行くよ、定春。」
良くできた、というべきか。
ませた、というべきか。
静まり返った部屋で、さてどうするか。
厚焼き玉子でプロポーズ
「ちゃん…えと…毎日俺のつくった厚焼き玉子食べてくれませんか?」
「毎日はやだ。」
「なっ!」
「他のも食べたいし、私もつくる。」
見下げた瞳は好戦的
(これはおっけーってことなのか?)