江戸の街で最も高い塔
「ターミナル」
全てはここから始まった。
突如起きた天人の襲来
成す術もなく崩れ落ちたそれまでの日常
侍は、戦った。
自分たちの信じた日常を取り戻すために。
しかし、歴史というものは無情なもので、
今ではそれは過去のこと。
ターミナルの周りを飾る街明かりが、
それを如実に語っていた。
そして、
その場所で変わってしまった街を見下ろすのは
変わる前の街並を知らないであろう年頃の娘
周りの黒に溶け込む渋柿色の衣をまとい、少し長い前髪が
ゆらゆらと風になびいていた。
その視線は、唯一か所に注がれている。
街のはずれの大所帯
泣く子も黙る
「真選組」の屯所
真一文字に結んだ唇と鋭い眼から娘の感情は読み取れない。
視線をそのままに
自分の胸に手をあてれば
確かにある
その感触
大切な大切な「命」
たった一つの「絆」
そして、自分がここにいる
「存在理由」
体温よりも幾らか冷たい鎖が
娘に存在を主張する。
明日には、渡さなければいけない。
新しい「主」に。
意を決したように、浅く息を吐き出し、
視線を空へと向ける。
次の瞬間には
娘はもういなかった。
彼女が居たはずの場所には、何一つ残っていない。
名前変換なくてごめんなさい。