01 出会い
   











さよならの始まり



















その日、朝から真選組は騒がしかった。




「おい、今日だろ?新入りが来るのって。」


「女隊士なんてもの好きもいるもんだよなぁ…」


「よく副長が了承したよな!」


「いや、どうやら松平のとっつあんが連れてくるらしいぜ?」


「んじゃぁエリートってことか?だったら上で汚れない事務仕事でもやってりゃいい…っぎゃぁっ」





いきなり屯所に鳴り響く爆発音。

日常茶飯事といえばそれで終わってしまうのだが、どう考えても警察組織内で鳴る音ではない。


爆煙の晴れたその場で「総悟」と書かれた巨大バズーカを肩に担ぎ、
隊士たちに睨みをきかせているのは
真選組鬼の副長 土方十四郎。


彼は、よく響く重低音で唸った。


「会議中だって…分かんねぇか…!?」


「すいませんっしたぁぁぁぁ!!!」



何かにつけて切腹を申しつけてくれてしまう恐ろしい副長に、
隊士たちは一斉に居ずまいを正して頭を下げる。


珍しく「切腹」という言葉を出さなかった土方は、
隊士たちを一瞥するといつもの席に戻った。






いつもの席、それは隊士たちの正面に座る真選組局長 近藤勲 の隣。





土方がそこに戻ると、近藤はたしなめるように隊士達を見渡した。




「まぁ、みんなの気持ちも分からんではないがな、少し浮かれすぎじゃぁないか?
新人が来るんだぞ。みんなもう少しビシッとだな…」



「一時間も朝風呂に入ってた人が言っても説得力ありやせんぜ?」





いつもよりも無駄に気合いと輝きを増した近藤に言うのは
彼の隣の席を狙い続け、土方抹殺を目論む 一番隊隊長 沖田総悟。




「…やっだなぁぁぁ!お妙さんという愛する人がいる俺がそっんな!
 高校男児みたいなことするわけないないだろ〜?あっはははは…」


「…じゃぁなんですかい、その間は。」


「……はいじゃぁ会議続けまぁっす!」


あからさまに話をそらした近藤を見て、土方はため息をついた。






会議もこれで終わり、という頃になって車のエンジン音が段々近づいてきて
屯所の前で停まった。
松平片栗虎の車はマフラーを改造しているのかいつもすごい爆音を響かせるのだ。






「どうやら到着したようだな。」


近藤の一声に全隊士が外に向かって走り出す。


会議中だろうがぁ!という土方の怒声も、
興奮した隊士たちの足音でかきけされてしまった。


「まぁまぁ、いいじゃないか。こんなところに女の子が来るんだ、
みんな嬉しいんだろう。」


近藤が笑いながら土方の肩をたたいく。



「…チッ」



土方は舌打ちをすると煙草に火をつけ、ゆっくり煙をはいた。




「使えなけりゃ、意味ねぇだろ。」





しかし、その言葉を聞いているはずの近藤はすでにいない。

全速で玄関に走っていく後姿が見え、土方はもう一度


煙とともにため息をはきだした。




























「で、なんだ、この状況。」


苛立ちを隠さない土方に、山崎は土方の隣に来てしまった自分を呪った。


「沖田隊長と…新入りの…手合わせ…です。」


「んなこた分かってるわぁっ!」


「ひぃっ」






哀れな山崎を横目で見ながら、沖田は正面にいる顔の見えない新入り隊士を見据えた。


「アンタも気の毒な人でさぁ。松平のとっさんのワガママに付き合わされて。」


彼女が首を横にふると、その顔を隠す長い髪が一緒に揺れる。


「そんな状態で刀がふれるともおもえやせんが…ま、いいや。よろしく、お願いしまさぁ。」






ほんの少し見える口元が少し、弧を描いた。






「じゃ、始めるぞ。お互いに、礼。…始めっ!」

近藤の右手が勢いよく、振り落とされた。