微温水 ヌルマミズ






まるでタールに浸かっているような、そんな感覚。


見上げた太陽も青空も、その存在がひどく曖昧で。


その中にいる自分もまたひどく不安定な存在で。








誰かが手を叩いたら全て無に還るのではないか、そんな気がする。








唯一存在のはっきりとしているのは太陽に照らされて自分の上に黒を落とす手の影だけで、
周囲が曖昧になればなるほど、その黒さは深く、重くなるようだった。







「飲み込まれそう?影に。」







気付けば隣に座っていた侑子に問われて四月一日は答えられなかった。
否、答えられそうなコタエを持たなかった。







「消えそうよ、アナタ。」










そう言われて侑子のほうを向けば黒い着物に身を包んだ彼女が居た。
まるで喪に服しているような。全身黒づくめの彼女は影そのもののようで。







フワリと腕を掴まれたと思えば、視界が真っ暗になり、不思議な香りに包まれていた。









「まだここに居るべきだわ。」


















微い水の中で、その声さえも遠くに聞こえた。