最近、攘夷派の動きが、激しい。
クレナイ
−京都−
「狂犬が紅桜っていう…刀を手に入れたんだと。」
背後で男が言った。
驚くこともなく、彼女は溜め息をつく。
「また、馬鹿なことを…」
遠くを見つめる彼女の左手が昔、刀があった辺りを彷徨う。
「行くのか?」
立ち上がり、一歩踏み出すと男が驚いて言った。
「もう関わりたくないのかと思っていた。」
風が吹くと、長い髪と共に中身を失った右の袖がたなびく。
「…アイツらにも、会いたいしね。」
彼女は戦いで右腕を失った。それでもなお、剣を握るのだろうか。
「行ってくるよ。」
背中越しの声に、男は
ほほ笑むことしかできなかった。
最近、得体の知れない辻斬りが巷を騒がせていた。
−江戸−
『紅桜を貴殿に探し出してきてもらいたいっっっ!!!!』
銀時は依頼で妖刀紅桜を探していた。
とは言っても最後のアテであった地球防衛基地でも空振り。
周辺の骨董店やリサイクルショップは全て回り切ってしまい、
今は腹ごしらえと称して一人、イチゴパフェを食べていた。
(紅桜って…どっかで聞いたことある気が…イチゴうめぇ)
初めてその名を聞いた時からそう思っていたが、そのどこかが思い出せない。
(……ブリーチ?いやいやいや…あ、生クリームうまい)
思い出せないまま、右手のスプーンはパフェグラスの一番下を掠め始めた。
(他にアテもないし、辻斬りっつうのを当たってみるかな)
地球防衛基地の主人である久良に聞いた辻斬りの噂を頼りにしてみるしかなさそうだ。
「ありがとーございましたー」
という店員の声を背中で聞きながら夕暮れの中、伸びをする。
銀の髪が紅くそまった。
「物騒だな…ったく。」
「ちょっと物騒なんじゃない?女一人で店番なんて。」
何年も顔を合わせてないし、連絡も取ってない。
急に現れたと思えば、開口一番にこれである。
久良は相変わらずな彼女に吹き出してしまった。
「いらっしゃい、…。相変わらずねぇ。」
が周りを見回しながら入ってくる。
「この店も相変わらず。…このゴリラの置物…昔来た時からあったわよね。」
冷やかしでいくつかの商品を手に取りながらゆっくりと進む。
…彼女は何も変わらない。
数年前、店の前で行き倒れていた時から。
刀だけ預けて急に消えてしまった時から。
赤みがかった長い黒髪と失われた右腕。
鋭い瞳も憎まれ口を叩かせたら一級品の口も。
変わらない。いつまでも。
「で、なんの御用?」
「用がなくちゃ来ちゃいけないような口振りね。」
目の前のカウンターに腰を下ろす。
自然、久良は頬杖をついたまま見上げる形になった。
「あら、用がないところに来るような人間だった?」
そう言うと鼻で笑われる。
「ま、そうね。」
の瞳が一瞬虚空をさ迷った。
彼女の髪に僅かな光が反射して紅く見える。
「預けたものを、…返してもらおうと思って。」