「相変わらず、良い女だな。。」


「別れた男に言われても、嬉しくないわ。」






青天に薄紅の刃がよく映える。

















「人の刀使って好き放題やってくれるじゃない。」


払われた紅桜から血が飛び、甲板を赤く染める。



彼ら以外は誰も動かない。

言葉を発しない。



異形の者もそうでない者も、抜き身の刀を手にしたまま、高杉との話に耳を傾けていた。




笑みを浮かべる高杉を横目に、は静かに納刀した、






「サヨナラを、言いに来たの。」






がそう言った瞬間に飛び出したのは赤い弾丸だった。




「貴様!裏切るっすか!?」



一気に距離を詰めた彼女の愛銃がの眉間に照準を合わせる。

しかし、は動じない。




ただ、少し悲しそうな顔でまた子を見つめるだけで、それがまた、彼女には腹立たしかった。



「裏切るっていうならそれ相応の報復は…っ」

「来島。」


高杉の一声で、また子の動きは完全に停止する。







「裏切るも何も、私はもともと鬼兵隊ではないよ。」








うなだれる彼女に、の言葉は深く刺さった。















「それにしても、まさかお前がまだソレを持っているとはな。」

部下の様子を気にするでもなく、高杉はに対して言葉を紡ぐ。







ソレと聞き、銀時は彼女の腰に収められている妖しくも美しい妖刀 紅桜に目をやった。


あの、暗い戦場で一際異色を放っていた薄紅色の刀。


恐らく、ソレが行方知れずになっていたがため、あの威勢の良い兄は記憶の中のソレを真似て対戦艦用機械機動兵器紅桜を完成させたのだろう。









「私だって、もう一度これを手にするとは思わなかった。」




の左手がそっと柄に触れる。
酷く手に馴染んでしまったそれを手の平で包むと少し落ち着いた。



「でも、」





続けなければいけない。





「あんたがこの世界を壊すっていうのなら…」









あの時、伝えられなかった別れの言葉を。









「私はコレを使ってでも世界を守るわ。」






















『人には必ず、別れの時が来ます。時にはそれは酷く自らを傷つける。だから強くおなりなさい。』









−それを乗り越えていくために―








あぁ、先生。あなたに会いたいのです。







ココハタダシイミチデスカ?





















「だから、ここでサヨナラ。晋助。」
























終わったと、銀時は悟った。
昔からそうだが、と高杉は話す、というよりは目で分かりあうことの方が多い。


何を考えているのか、お互い分かるのだそうだ。




そのの、そして高杉の目が、これでお仕舞いだと言っていた。



鋭い眼光に、お互い一片の迷いもない。






桂もそれは察したようだ。







を守るように二つの刃が高杉に向く。

挟まれた彼女も、未だ高杉から視線を外してはいない。




「高杉ィィィッ!!そういうことだ!」



「俺たちゃ次会った時は仲間もクソも関係ねェ!」




「全力で…」







「てめーをぶった斬る!!」







「せいぜい街でばったり会わねーよう気をつけるこった!」


















私は銀時と小太郎と共に駈け出した。
















船の外には飛行用のバイクが待っているはずだ。






船から飛び出す時、一瞬彼と…高杉と目が合った。




彼の無表情な顔。

そこに本当に微かな悲しみを見つけた気がするのは、私のただのエゴだろうか。












そして私は…無表情でいられただろうか。